知的財産を狙うインテリジェンス活動

1 知的財産とインテリジェンス
知的財産とは土地、建物や商品のように物としての有形財産でなく、アイディアや独創的なデザイン、蓄積された技術そして営業情報や顧客対応ノウハウなど、人間の幅広い知的創造活動や努力によって創り出された「価値ある情報」である。
また情報の特徴として、特殊な技術やノウハウがあれば誰でも容易に模倣出来、新たに「価値ある情報」を創りだし、自社製品に付加価値を付けることが出来るなど優れものでもある。

池井戸潤の「下町ロケット2」では、ライバル社の社員を引き抜き、設計図とアイディアを入手しているが、顧客情報や公開前の新作情報がハッキングなどによってライバル企業などに流失した事例は後を絶たない。

このようにインテリジェンス(情報)活動といえばイリーガル(illegal)な非合法活動が目に浮かぶが、実際には必要とされる情報の80%以上がインターネットや新聞、雑誌なの公刊資料から入手される。

要は数多く接する情報の中から価値ある情報に接した時にピンと来るか来ないか、それを点と線で繋ぎ合わせ、情報に一つのストーリー性を持たせ、価値ある情報に育てられるかである。この差が国際化の中で多様化する顧客ニーズに合ったマーケティング調査に基づく製品開発が出来る企業と出来ない企業の明暗を分ける分岐点となる。

2 3つに大別される情報

古くから情報=インテリジェンスと解されてきたが、インターネットの普及などによる情報伝達のスピード化と情報ニーズの変化そして認知度、時間軸などにより、「インテリジェンス」、「インフォメーション」、「資料」の3つに大別される。
日本では、「インテリジェンス」、「インフォメーション」を総称してインテリジェンスと位置付けているため、色々な面で誤解を招いている。

新聞記事で例えるなら、①記者が入手した初期段階の情報は認知度が少なく、希少性が高いので「インテリジェンス」、②やがて新聞記事になり認知度が広がると「インフォメーション」に変わり、③さらに読み古された新聞は切り抜かれ「資料」となる。

この3つに大別された情報も、色々な視点や角度から組み合わせ付加価値をつけると、新たなインテリジェンスとして生まれ変わる。これが情報分析または情勢分析と名付けた新たなインテリジェンス創造である。

(1)インテリジェンスとは
インテリジェンス(intelligence)は、元々軍事用語の「諜報」であり、日本では情報=インテリジェンス・インフォメーションと解されてきたが、企業や機関によるインテリジェンス活動が活発化と必要性の増大により、認知度の少ない希少性の有る情報をインテリジェンス、一般化した情報をインフォメーションと呼ぶようになった。

インテリジェンスは、希少性故にイリーガルな入手方法による情報収集ととらえがちだが、実際には、人と人との何気ない会話や出会いの中から生まれる場合がほとんどである。

株取引でいえば、イリーガルな方法や何気ない会話の中から得た、「インサイダー情報」がインテリジェンスであり、公開された時点でインテリジェンスとしての価値を失い、インフォメーションに変わる。

(2)インフォメーションとは
インフォメーション(information)は、一般に受付、案内として使われているが、広く知らしめる意味での報道や情報と訳されている。

インテリジェンスは希少性を保つため常に秘匿が求められるため、情報伝達方法が閉鎖的であるのに対して、インフォメーションは、官報や新聞、テレビそしてインターネットなどが情報伝達媒体となるため開放的である。

現在よく使われるインフォメーションリテラシー(information literacy)は、情報 (information)と 識字 (literacy) を合わせた言葉で、インターネットなどの開放的な情報媒体から発せられる情報を利用して自己の目的を達成しようとするもので、昔のインテリジェンス時代では、諜報、謀略と言われていたが、現在ではスマートに「情報活用能力」と訳される。

(3)資料とは
資料は、調査や研究のための論拠や参考となるものであり、対象とされる本人が直接言及した言葉や録音をそのまま活字化したものを「1次資料」。これを取捨選択し、編集、整理した資料を「2次資料」。さらに加工を加えたり、信頼度が低い物は、「3次資料」として区分される。新聞記事は、記者が取捨選択して活字に仕上げているため、2次資料に分類される。

3 何処にでも落ちているインテリジェンス
実際に起きている事象をどのように見るかによって、インテリジェンスは大きく変わる。
インテリジェンス感覚を養い、テレビのワイドショーを見る目を変えよう。

(1)事例その1
本年1月4日に通常国会が開催されたが、共産党の幹部6名が初めて開会式に出席した。これまで共産党は、開会式で天皇陛下がお言葉を述べることに納得せず、1947年の第1回国会に一部議員が視察のため出席した以外、開会式は欠席していた。

この事実を漫然と見て、共産党も変わったとだけ考えるか。
蓄積された過去の資料や知識の振り返りが無く、全ての情報が画一的に興味情報として思考の中で処理している。
この事実を「何でそうなるの」とWhyを持ち、自分なりの回答(ストーリ)を作り出す。

自分なりの回答を作り出す前になすべきこと。
過去の資料(新聞の切り抜き)からこの問題を見てみよう。
ア 共産党は、連合政府構想を民主党に呼びかけている。
イ 民主党は、党内に左右の勢力が有る。
ウ ア、イから推察して、両党の思惑、さらには7月に予定されている参議院議員選挙を踏まえて資料考察できれば、インフォメーション(新聞記事)をインテリジェンスまで育て上げたことになる。

(2)事例その2
週刊文春の記事によると、タレントのベッキーと人気バンド「ゲスの極み乙女」のボーカル・川谷絵音のスキャンダルが報じられ、ベッキーと川谷が交わしたLINEのやり取りや画像が掲載された。記事を漫然とみて、あの清純派タレントも人の子かと思う。インテリジェンス活動に対する認識が甘く、危機意識が薄い。

何故、LINEのやり取りまでが流失したかと考える。

自分のスマホや携帯だけでなく、インターネットなどに対して常にハッキングに対する警戒意識がある。
実際ポイントカードの登録など、様々なサービスで同じID(メールアドレス)やパスワードを使い回している。このためメールのパスワードやアドレスを盗み出し、成りすまし犯がPCからログインしてインターネットオークションに参加、多額の金品物を騙し取る犯罪が後を絶たない。

4 何気ない日常にインテリジェンスはある
今日のPCやスマホそして携帯電話の普及は、多くのインフォメーション情報を瞬時に、しかも多量に取得することができるようになった。このため多量の情報の中からインテリジェンスやンフォメーション情報を選び、精査を加えて作り出すためには、より高度なインテリジェンス感覚が必要になってきた。

また、インターネットやメール、LINEなどSNSの普及は、ハッキングなどによる知的財産が流失する危険性を常にはらんでいることを忘れてはならない。

このように、私はインテリジェンスに関係ない世界に生きていると思っていても、携帯やスマホ、インターネットやメールを使っている限り、現代の人間はインテリジェンスの中で生活し、ダイヤモンドと石ころ情報の入り混じった世界に生きている。