北朝鮮は何故挑発行為を行うのか(北朝鮮の行動には意味がある)

北朝鮮の核、ミサイル開発問題を巡って米、中、ロ、韓そして日本の思惑が入り交じり、刻々と北朝鮮をめぐる情勢が変化していく中、5月14日に北朝鮮は最大射程4000キロの中距離弾道ミサイル「ムスダン(火星10)」よりも大型の新型ミサイル(火星(ファソン)12)を発射、さらに5月24日には弾道ミサイル「北極星2型」の発射実験を行った。

朝鮮半島をめぐる情勢が緊迫している状況下において、何故北朝鮮は挑発行動ともいえるミサイル発射実験を行ったのであろうか。 ある有名な北朝鮮研究家が「北朝鮮の行動にはすべて無駄がなく、理由がある。」「理解できないのは、北朝鮮の立場に立って考えないからだ」と意味深い言葉をかつて話していたことを思い出す。

孫子に「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。」と言う言葉があるが、北朝鮮の挑発に対して、怒りが先に立ち北朝鮮が何を目論んで核・ミサイル開発を行っているのかを正確に分析・理解しなくては、北朝鮮を利するだけである。事実、北朝鮮から発せられる要求を呑み、北朝鮮と早期対話して問題解決を図ろうとする動きも出てきている。

北朝鮮との核開発についての話し合いでは、1994年10月、アメリカのクリントン大統領と間で結ばれた枠組み合意により、北朝鮮が保有する黒鉛減速型炉と核兵器開発の放棄と引き換えに、日本と韓国の費用負担して朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO Korean Peninsula Energy Development Organization, )を組織し、核拡散の恐れの低い軽水炉2基と重油燃料を北朝鮮に無償提供したが、見事に裏切られた苦い経験がある。 重油や軽水炉の無償提供、度重なる食糧援助にも関わらず、北朝鮮が核・ミサイル開発を止めない理由は何処にあるのであろうか。

その一つの理由として北朝鮮の地政学上の位置関係と東西冷戦の北朝鮮に及ぼした状況が大きく影を落としているのではないか。日本のポツダム宣言受諾とともに、朝鮮半島は北緯38度を境に南北に分断されたが、日本、韓国がアメリカの影響下で経済発展を遂げたのに対して、北朝鮮はソ連の影響下に置かれ、東西冷戦と中ソ対立をもろに受け、中ソの板ばさみにあい、国家の立ち位置が微妙な状況下に置かれていた。

1990年代に入り、ソ連の崩壊とロシアの誕生、中国の改革開放政策の中、かつて中国が核開発を行ったように、北朝鮮の存在感を示す最強の兵器として、核と核を運ぶミサイルを選んだに違いない。事実北朝鮮は、朝鮮半島の地政学上の位置を巧みに利用し、最強兵器をフルに見せつけ、アメリカ、中国、ロシアを手玉に取って、自存自衛の道を探っている節がある。今、我々はこの点を深く理解し北朝鮮問題を考えなければならない。